変わる熱回収・サーマルリサイクルの位置づけ
ここ10年ほどの間にリサイクルの国際比較が進み、各国での計算方法の違いが浮き彫りになりました。日本ではリサイクルに熱回収を含める考え方の修正が迫られ、温室効果ガスの排出削減も見据えた政策転換がはじまっています。既に、熱回収を前提とした選別方法や設備、ビジネス慣行を変える取り組みが始まっています。
<マテリアルリサイクルのための分別/技術の実装>
これまで受け入れ側の高い技術に支えられ、排出事業者は塩化ビニールなどの塩素分を分別除去すれば、比較的安価に熱回収することができました。そのため、マテリアルリサイクル向けに手間をかけてプラスチックを分別しようという機運が生まれませんでした。また熱回収の定量的な定義がなく、熱回収率が低くてもリサイクルにカウントしてきましたので、リサイクル率向上の安易な逃げ道になっていたことも否めません。
以前からマテリアルリサイクルされるプラスチックはありました。しかし、分別しやすく、大量に排出される単一樹脂のプラスチックがほとんどでした。複数の樹脂を積極的に選別していたのは、容器包装リサイクルの処理施設以外にはほとんどありませんでした。今後は、排出事業者〜中間処理業者〜リサイクル業者の間でコミュニケーションを取りながら、分別方法〜選別技術〜リサイクル技術をどう組み合わせていくかが課題となります。
リサイクル素材の市場活性化が急務
一方で、この流れを加速させるためには、リサイクルされた素材を原料として使っていく市場での需要が必須です。リサイクル素材への評価(単価)が上がれば、より多くの使用済みプラスチックを集めることができます。しかしこれまでは、国内メーカーの品質要求の高さと、リサイクル素材を採用するインセンティブの低さにより、なかなか活用が進みませんでした。ところが、EUが自動車のプラスチックの25%を再生材にすることを義務化するなどし、その期限と想定される2030年を目標に自動車メーカーの取り組みが急速に進みつつあります。このようにインセンティブがあれば、メーカーも本気でリサイクル素材活用のための技術開発に乗り出すことができます。2019年のプラスチック資源循環戦略の「2030年までに再生利用を倍増」という目標に向けて、そろそろ規制的手法の導入を検討すべきと言われています。
2025年には資源有効利用促進法が改正予定
6月28日にNHKなどで広く報道されていますが、産業構造審議会で「成長志向型の資源自律経済戦略の実現に向けた制度見直しに関する中間とりまとめ(案)」が取りまとめられ、再生プラスチックの使用に関する義務が拡充されることになります。2025年の国会で改正する方向のようです。この改正、施行を待つことなく、多くの産業分野で再生プラスチックの使用が進んでいくことが望まれます。
<中間取りまとめ案の抜粋>
再生材の利用に関する義務の拡充(判断基準策定・計画策定・実施状況の定期報告)
国内マーケットの健全な育成が必要な資源としてプラスチック等を制度的に指定し、再生材の利用に関する義務を拡充する。具体的な義務の内容としては、再生材の利用等に関して取り組むべき事項の明確化、それに関する計画の策定、実績の定期報告を追加する(PDCA サイクルの構築)。
具体的な対象業種及び義務の実施時期については、業種ごとのプラスチック等の利用実態、国内での再生材の供給動向(質・量、コスト等)、海外の動向などを踏まえて検討する。定量目標を将来的に入れる際は、CPs で策定する業界ロードマップや国内での再生材の需給バランス等を踏まえて設定する。また、計画の策定や実績の定期報告については、対象業種の特性等を踏まえつつ、国への報告事項として必要な内容を整理の上で設定する。