「プラスチック使用製品設計指針」を考える

プラスチック製品設計とリサイクル

リサイクル、再資源化の推進は製品設計から

モノづくりのスタート地点は、資源の採取でも、製造でもなく、設計=デザインです。製品がどのようにリサイクルされるかも、設計によっておおきく影響されます。指針では、取り組むべき事項として「構造」と「材料」に加え、配慮すべき事項として「製品のライフサイクル評価」「情報発信及び体制の整備」「関係者との連携」「製品分野ごとの設計の標準化並びに設計のガイドライン等の策定及び遵守」を挙げています。
これらの事項は、それぞれが独立しているものではなく、相互に関連しあっているため、一つだけ取組めばよいというものではありません。製品ごとの状況を踏まえ各社が総合的に判断して取組むべきものとされています。
網羅的な説明は、環境省のウェブサイトに譲るとして、ここではイメージが湧くように、具体例で考えてみます。

指針の内容を具体的に考えてみます

プラスチックの一部を紙や木に替える場合

例えば、プラスチックの使用量を半分にして、その分を再生可能なバイオマス素材である木や紙で代替するという方法が考えられます。しかし、指針では「構造」として“単一素材化等”を検討することとされていますので、この手法はそれに反する可能性があります。これまで熱回収をしてきたのであれば、プラスチックと紙や木が混合していても問題にはなりません。ところが、プラスチックとしてマテリアルリサイクルするのであれば、木や紙の混入は大きな障害となります。

この弊害を避けるために“分解・分別の容易化”をすることができます。しかし、廃棄する人に分解方法をどう伝えるのか、伝わったとしてどの程度分解してくれるのかを検証しなければ意味がありません。

一方で「材料」の観点から、代替素材として選定する木や紙の調達先に問題ないかを確かめるべきでしょう。再生原料を使っているか、適切に経営されている森林から供給を受けているのかなどについて、第三者認証を得るなどトレーサビリティの問題も生じます。なかなか面倒な話です。

ISOやJISでは?

JISQ 14021では、自己宣言による環境主張 (タイプII環境ラベル表示)の例として、「リサイクル可能」を挙げています。ここでは、製品の構成要素だけでなく、実際に便利に利用できる収集の仕組みがあることも要求しています。つまり、リサイクル可能な素材を使っているだけでは不十分で、それがリサイクルされるための仕組みが社会実装されていなければならないということです。これは、JISやISOの規格であり、これを順守しなくても罰則などのペナルティがあるわけではありません。しかし、ここまで配慮、対応しないと、絵に描いた餅になってしまいます。

もちろん、現在の設計が、現状のリサイクルの仕組みや技術に即しているかを確認し、そうでない場合は設計を変更するべきでしょう。設計担当者は、リサイクル工場の現場や技術のことも知らなければならない時代なのです。それどころかメーカーとして、リサイクルの仕組みを構築したり、リサイクル技術の開発をすることもあるでしょう。

求められる総合的な取り組み

このような取り組みにあたっては、「製品のライフサイクル評価」という視点を持ち、リサイクル業者などの「関係者との連携」も必要となるでしょう。さらに効率化を図るため各メーカー単独ではなく「製品分野ごとの設計の標準化・・・」を業界団体で行い、共同して回収の仕組みを構築する取り組みも始まっています。
「情報発信及び体制の整備」も重要です。製品の構造や部品の取り外し方、材質名を何らかの形で公開することなどが求められています。例えば、一見すると純粋なプラスチックのようであっても、強度を高めたり、リサイクル素材を活用するために、複数の素材を練り込んでいる場合があります。そのような素材はリサイクル設備にトラブルを起こしたり、再生プラスチックの品質に悪影響を及ぼすリスクがあります。したがって特に材質名については、部品に直接表示することが望ましいのです。このようにプラスチック製品の設計指針でありながらも、関係者との連携や情報発信に至るまで幅広い配慮と取り組みが求められているのです。