材料(マテリアル)リサイクルとケミカルリサイクルのCO2排出量
プラスチックリサイクルの、手法別のCO2排出量を比較した資料としては、容器包装リサイクル協会で行われた調査が有名でしょう。(←のリンクは最新データへの更新版ですので、全体についてはこちらをご覧ください)。この資料から、「コンパウンド(材料リサイクル)」をする場合と、「コークス炉化学原料化(ケミカルリサイクル)」で発生するCO2を抜き出しました。
引用元:「プラスチック製容器包装再商品化手法に関する環境負荷等の検討Ⅱ」平成24年6月 公益財団法人 日本容器包装リサイクル協会
ケミカルリサイクルのCO2は、材料(マテリアル)リサイクルより30%以上多い
- SCOPE3のCO2を削減するなら、材料リサイクルが優位
緑色のバーはリサイクルした場合のCO2の量です(2種類あるのは計算ソフトによる違いです)。それぞれ、コンパウンドと、コークス炉化学原料化した場合に発生するCO2の量を示しています。これによると、容器包装プラスチック1㎏を①コンパウンドする場合は約2.2㎏、②コークス炉化学原料化する場合では約2.9㎏のCO2が排出されることになります(実はこの排出量、焼却した場合と同等です)。つまり、コークス炉化学原料化をするとコンパウンドに比べて30%以上のCO2が余計に発生してしまいます。
- リサイクルによる削減効果を考えると少々複雑
バージン材を使った場合のCO2は、赤色+オレンジ色のバーで表されます。コンパウンドと比べてコークス炉のCO2の発生量はかなり多くなります。その結果、(青色+水色のバーで示される)リサイクル材への切替による削減効果=”バージン材ーリサイクル材”は、コークス炉化学原料化のほうが少し多くなっています。そのため容器包装リサイクル協会では、削減効果の観点からは、材料リサイクル手法が特段優れているわけではないと結論付けています。
ただし、鉄鋼メーカー各社は水素などを活用してCO2排出量を大幅に削減する目標を立てています。例えば日本製鉄のHPでは、2030年には30%削減、2050年にはカーボンニュートラルを謳っています。そのため、近い将来コークス炉の代替原料としての削減効果は、かなり少なくなるのではないでしょうか。もちろん材料リサイクルも、プラスチックの原料がバイオマスプラスチックに切り替わることで削減効果は少なくなるでしょう。削減効果はあくまで相対評価ということです。
プラスチックを処理委託する側としては、SCOPE3に該当する、サプライチェーン上のCO2排出量を把握/管理すべきでしょう。
※上記グラフのバーは、それぞれ少し違う色で2本づつありますが、使用した2種類の計算ソフトによる違いです。
プラニックのCO2排出量
なお、ここでご紹介した資料は、容器包装プラスチックの再商品化事業者を対象とした調査です。プラニックとはリサイクル手法が全く違うため、単純比較をすることはできません。そこで、グループ会社の容器包装プラスチックの再商品化事業者(エコスファクトリー・グリーンループ)とプラニックを比較しました。その結果、プラニックのほうが1割以上CO2の排出量が少ない事がわかりました。(ヴェオリアグループでは、全世界の施設のCO2排出量を把握、管理しています。)
今この瞬間も、焼却炉からCO2が排出されています。焼却せずにすむプラスチックは分別回収し、できるだけ早くリサイクルに切り替え、CO2の排出削減に取り組みましょう。